そのきっかけの一つが、ホスピスでの経験でした。
初めてボランティアに入った日、先輩スタッフの後について、ある入居者さんのお部屋に入りました。その人はもう寝返りを打つことも、水を飲むこともできない状態になっていました。
「これからオムツ替えるから、体を押さえててくれるかな?」
そう言われて、横向けにした骨と皮だけの入居者さんの体を私は押さえました。
その時、私は初めて、人の体からタール状の便がとめどなく流れ出るのを見ました。
ベッドの上に広げられたオムツは一気にプールのようになって今にも溢れそうになり、排泄物は流れる先を探していました。
その光景は私を釘付けにしました。
心が大きな声で叫びました。
あぁ、ここには、生きるということが、隠されずにそのままある!
人は生きて、そして死んでいく。
その全てが、取り繕われずにそのままある!
生命が、命がここにある!
私は感動に打たれていました。
ありがとう!
ありがとう!
ありがとう!
ありがとう!
ありがとう!
この場所に連れて来てもらえたことへの感謝が溢れて止まりませんでした。
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「最期の最期って、中にあるものを留めておけなくて外に出てきちゃうんだよね。Kさんもそろそろ旅立ちかなぁ」
後になって先輩がそう教えてくれました。
毎日たくさんの人が人生の幕を閉じているはずなのに、私はそんなことも知らなかった。
でも今ここで、私はそれを目撃している。
本当に知りたかった「生きる」ということを学んでいる。
私がオムツ交換のお手伝いをさせてもらった翌日、この世にほんの少しの私物を残して、Kさんは天へと帰って行きました。
深い感謝と、人生への畏敬と、「私は今、いるべきところにいる」という確信。
何かが沸き立つような感覚に満たされて、ホスピスでの初めてのボランティアは終わりました。
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