フルカラーの人
その人が街にやってくることはそうそうない。
その人が住んでいる場所には住所はあるのだろうか、と時々想像する。
その人が街に現れると、わら半紙に印刷されたモノクロの背景に、フルカラー印刷のページから切り取られたその人がペーストされたみたいに見える。その人だけがフルカラーで、色彩が躍動して見えるのだ。
まぁそもそも、その人が街にやってきて初めて、「ああ、ここはモノクロだったのか」と気づくのだけれど。
切り取り線を指させるのじゃないかというくらいに、フルカラーのその人と、モノクロの街や人々の境ははっきりしている。そして、私たちがカメレオンのように見事に色を変えて、モノクロの背景に溶け込んでいることがよくわかる。
その人に出会うと、通りすがりのある人は、「とんでもないものを見てしまった」という顔で立ち止まる。またある人は、まるでその人がまったく見えていないかのように通り過ぎる。
たまにその人に、普段何をしているのかと質問してみる。その人は丁寧に説明してくれる。説明を聞いている瞬間は「ふんふん」と納得しているのだけど、後になって思い出そうとすると、なぜかいつも思い出せない。
その人の瞳をのぞき込むとどこか遠くへ行ってしまいそうなので、2秒以上見つめたことはない。
次は3秒くらい挑戦してみるか。はたして時間というものを覚えていられるかな。
そんなフルカラーの人。
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