すべては計画通り(前編)



妊娠がわかってすぐの頃、もしかしたら中絶しなければいけないかもしれない、という状況がありました。

その理由をここに書くことは避けますが、産むのか産まないのかの差し迫った判断を数日中にしなければならなくなりました。


ペルーでは妊娠中絶手術は完全に違法です。

日本では母体保護法というものがあって、母性の生命と健康を保護することを目的として、一定の条件を満たした場合には不妊手術または人工妊娠中絶が認められています。

でもペルーではすべての人工妊娠中絶が違法です。ですので、たとえ手術を行うのが免許を持った医師であっても、手術自体はモグリで行われます。


彼ともたびたび話し合いました。

子どもを産んで育てることはチームワークだと私は考えているので日本の家族にもオープンに状況を伝えました。

お腹の中では胎児の始まりである胎芽が着々と育っているので、一日も早く決めないといけません。


手術はしたくない気持ちと、でもせざるおえないのかもしれない状況の間で、私は板挟みになったように感じ、眠れない夜を過ごしました。地面に穴があくほどため息をつきました。


まだお空にいる魂に「もしこの状況があなたにとってあまりに大変なら、これでは魂の目的を果たせないようなら、やめてもいいよ(流産になってもいいよ)。あなたの選択を尊重するよ」と私は話しかけていました。


(流産についての私の考えは、過去記事 『それも魂の選択』をごらんください)


情緒的に強い緊張が続いた数日の後、もし中絶手術をするならばどのような内容になるのかをドクターに聞きに行きました。そしていよいよ、さあ決めないといけないというタイミングが来て、私と彼は病院の廊下で話し合いをしました。


もしかしたら周りに私たちの英語の会話が分かる人がいたかもしれませんが、もう構わずに、とにかく今が話すときだと感じ、たくさんの沈黙と、たくさんの言葉と、たくさんの涙で話し合いました。

そうして二人で話し合った結果、産むということに決まりました。


私はたくさん泣いたこともあって、半分放心状態で彼と病院を出ました。そして病院の前の道で、アンデスの強い日差しと柔らかい風を浴びながら車が途切れるのを待っていたとき、微かで、でもとてもはっきりとした音のない声が私の頭に入ってきました。


(続く)

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