ファーストコンタクト⑤
私の叔父はとても寂しがりやでした。
他の人には理解しがたい「悲しみの種」のようなものが、叔父の深いところにあるようでした。
それでお酒を飲んでは人恋しくなって、親戚中に電話をかけました。
特に話題があるわけでもなく、ただ相槌を打って電話越しにでも一緒にいてくれる人が欲しかった叔父の話は、いつも堂々巡りで、舌も回っていませんでした。そんな叔父の電話に付き合いきれる人はそうそうおらず、煙たがられたりすげなく電話を切られたりしていることも私は知っていました。
そんな叔父が、ある冬の日に突然息を引き取りました。
私は16歳でした。
次に叔父の姿を見たときには、叔父はすでに、よくあるセレモニーホールのような葬儀会場で、ご遺体として綺麗に棺に収まっていました。
そしてその姿に出会ったときに、ある衝動が私の中から吹き出してきました。
私はたじろぎました。
私は叔父に、どうしても子守唄を歌ってあげたくなったのでした。
何かそれをどうしてもしなければいけないというような、そわそわとした感覚にとらわれ始めました。
私には、寂しがりやの叔父が、まだそこにいるようでした。
心臓がドキドキし始めて、その鼓動が自分の耳にも聞こえてきました。
お葬式で歌を歌わないことぐらい当時の私はよくわかっていました。声を上げて何かを唱えていいのはお坊さんだけで、あとの人たちは皆しんみりと静かにしていなければいけないのです。
でもどうしても叔父に子守唄をプレゼントしたくて、そしてその想いには抗えない大きな力があって、私はそ知らぬ風を装って、棺の近くに座りました。
そうして小さな小さな声で、誰にも聞かれないように小さな声で、私は歌い始めました。
(続く)
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