ファーストコンタクト④



立ちションの強烈な匂いと

路上で寝転がるおじさんたち。


ドヤと呼ばれる安宿がひしめき、生活保護で暮らすお年寄りがスーパーでお惣菜を買い求める。

そんな街の真ん中にその施設はありました。


私たちの見学申し込みに対して

「歓迎します」

と返事をくれた施設長が事務所で迎えてくれました。


施設長と一緒に一通り施設の中を見て回りました。

玄関には生花が飾られ、各個室のドア横には表札のように入居者さんの名前がありました。

小さい規模の施設ながら出来立ての食事を提供する厨房もあり、屋上には礼拝堂がありました。

そこにはイエスキリストとお地蔵さんが飾られていました。


礼拝堂の手前の通路で一人の女性とすれ違った時、

「彼女はヒーラーさんですよ」

と施設長が教えてくれました。


ヒーラーも来る場所なんだ!


これまで見たり読んだりしてきたどのホスピスとも、その施設は違っていました。





事務所に戻ると、施設長がビデオテープを取り出して一本の短いドキュメンタリーを見せてくれました。アメリカのある女性が、死の床にいる人の元を訪れてハープの演奏と歌を届けている、という内容のものでした。


演奏と歌によって、それまで強い痛み止めでも消えなかった癌の疼痛がなくなったとか、それまで頑固で怒ってばかりで誰も寄せ付けなかった人が初めて涙を流してすっかり人が変わってしまったとか、たくさんの奇跡のようなことが起きている、とドキュメンタリーは伝えていました。


「これがこの施設でできることだと思うんです。」

そんなことを施設長はおっしゃったように思いますが、そのドキュメンタリーに身も蓋もなく涙が流れ始めてしまった私の耳には、施設長の言葉が遠くおぼろげにだけ聞こえていました。


「私以外にも同じことをしている人がいる。私がしたあの行為が理解される場所があるんだ・・・」


16歳の時の自分が、初めて許されたように思いました。

涙とともに何かが流れ出て腑抜けになった私の体は、事務所の椅子に深く沈み込んで行きました。



(続く)



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