生まれる前のお話 ⑤




世には「胎内記憶」という言葉があるけれども、私にはその記憶がない。

理由は至って単純で、私は胎内にいなかったからだ。


生まれる前のお話 ③ に書いたような経緯で、谷村有希として生まれることを決めてから、私はときどき、これから家族となる人を眺めていた。


父は私が物心ついた頃よりもさらにスレンダーで、

母は少し髪が短く頭頂のまっすぐな分け目が印象的で、

姉は鞠のように飛び跳ねていた。

(私がこういった記憶を取り戻していったのは大人になってから。だから私が生まれる前の父母姉の姿は、私が生まれてから知っている彼らとは違っていたのでちょっと驚いた)


でもそれはいつも、「少し上から見下ろしている」という位置だったので、母のお腹の中から何かを感じたり、聞いたり、ということはなかった。

ではいつ私は、この肉体から世界を見るようになったのか(受肉したのか)というと、それは産道を通っている間だった。


母の陣痛が始まってからも、私は相変わらず少し上からその様子を見下ろしていた。

いよいよやってくる転生に、緊張と不安と興奮が入り混じった感情を覚えて、またしても私はブルブル震えていた。そんな私を大きな大きな大きな天使が抱っこしてくれていた。私はその大きな大きな大きな天使に抱っこされたまま、進んでいく状況を震えながら見ていた。そして胎児の頭(私の頭)が産道を降り始める頃、いよいよ受肉が始まったのである。


この瞬間の感覚をかなり鮮明に覚えていて、それがために小さい頃は苦手な肌触りというものがあった。このあたりのことは、別の投稿で書きたいと思う。


だから私は、他の子どもたちが胎内記憶としてお腹の中の様子の話をしているのを聞くたびに、

「私は受肉したのが遅かったからなー。その記憶はないなー」

と思っていた。

ここでも相変わらず、「どちらか一つが正しくて、真実は一つしかない」という考え方を私はしていない。


そんなある日、またしても2018年、激しく膝を打ちたくなるような、衝撃的な話を聞いたのである。

この写真の男性は、Edgar Cayce(エドガー・ケイシー)

20世紀最大の霊能力者と言われている。


彼はフルトランス状態(本人の意識がまったくなくなる)に入って、健康相談・人生相談・神とは何かetc. ありとあらゆる質問に答え、生涯をかけて1万4千件とも言われるリーディングを行った男性である。書籍化され日本語訳されたものも多数ある。


あるリーディングの中で、

「人の受肉の第一段階は、出産の48〜24時間前から24〜48時間後の間に行われる。胎児の体は胎内でlife force(生命エネルギー)によって育成される」という趣旨のことを言ったそうなのである。


この時間枠は、まさに私が受肉したタイミングだ。

生まれてからもしばらくの間は受肉がまだなされていないことがあるというのも、私には深く納得できる。なぜなら、私は自分の意識(魂)が入っていないにもかかわらず肉体が母のお腹の中であくびをし、キックをし、まるで自動操縦のように育っていくのを見ていたので、生まれてもなお意識が入っていないことがあるというのも十分に納得なのである。


幽体離脱の経験者が、自分の意識が抜けても、体は呼吸をし脈を打ち(場合によっては歩いたり会話をしたり)しているのを見たというのと、同じ原理かもしれない。


また、リーディングの中で

「受肉の第一段階」

という言葉が出ているのもとても興味深く、同時に深く頷けるものがある。

これは、「新生児はどのように世界を見ているのか」というテーマに関わってくる。

それもとても大切な話なので、改めて別の機会に記したい。


(続く)

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