生まれる前のお話 ②



肉体のなかった頃、非物質の世界でいろいろなことをしていたのだけれど、

その中でもいわば「仕事」と呼べるようなものがあった。


それは、一つの人生を終えた人が、小さな14インチくらいのスクリーン(ちょっと大きなiPadみたいな)に映し出された映像を見ている横に私は立って、黙ってそれを見守るという役目である。

そのスクリーンには、その人の直近の人生のダイジェスト版が映し出されている。

人生の中の主要な瞬間が次々と映像として現れる。


基本的にはただ静かに、その人の隣で見守るだけなのだけれど、

ごくまれに、

「この出来事はこう理解をすることもできるよね」

「本当はこういう事情があったんだよ」

と、声なき声をかけることもある。


でもやはり基本は、

その人の横に立って、その人の中で発生する変化を感じながら

静かに見守るのだ。

横に立っているだけで、その人の中でどんな思いが、どんな解釈が起きているのかを

我が事のように感じることができた。


そうして映像を見ている人たちは

まだ非物質の世界に戻ってきて間もないからか、

生前の姿(性別、背格好など)を肉体を離れてもなお保っている。


私はというと、

大きな楕円のエネルギーの塊といった感じで、

人としてのシルエットはもはやない状態だった。


そうやって、

何人もの人たちが次々と人生を終えて戻ってくるのを私は迎えた。

それが私があちら側でしていた事の一つである。



(続く)

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